鍼灸は肩こり・腰痛に効く、ぐらいの認識の方が多いようですが、
実は鍼灸の適応症は実に多様でさまざまです。
そこで当院で鍼療する機会のあった症例の中からいくつかご紹介します。
尚、ここでご紹介する症例の内容はすべて、
当院で実際に鍼療を行った内容であることを、ここに明記しておきます。
不妊症 症例1
主訴
不妊症
患者
女性 33歳
経過
平成24年6月初診。
1年前から不妊治療。
タイミング療法
→人工授精
→体外受精
→顕微授精
とステップアップしてきたが、妊娠には至らなかった。
2回目の顕微授精を前に鍼灸治療の併用を希望して来院。
既往症
子宮筋腫。平成23年に手術。
治療
腎虚証として、陰きょう脈の照海、足三里、関元などに置鍼。
背部は反応の出ている兪穴に置鍼。膀胱兪に温灸。
考察
子どもを授かりたいという思いの強さが、早い段階でのステップアップに繋がったと思われる。
週に1回の治療を続け、5回目の治療が終わった後に胚移植した。
無事妊娠して、平成25年の年賀状で妊娠7か月を迎えていることを連絡してくださった。
不妊治療でよく質問を受けるのが、鍼灸治療を受けるタイミングである。
通常は週に1回程度の通院で体質改善を図っていくが、
人工授精や体外受精を行う前日、もしくは当日の朝に鍼灸治療を受けて、
臨床において子宮を含む体温を上げておくと着床率が上がりました。
不妊症 症例2
主訴
2人目不妊
患者
女性 37歳
経過
平成24年1月初診。
2年前に自然妊娠で1人目を授かった。
2人目を希望し、4か月前からホルモン治療を開始するが、
副作用で発疹が出たため3ヶ月で中止した。
現在はタイミング療法のみ行っている。
既往症
子宮内膜症。擬閉経療法を行っている。
子宮腺筋症。3回ほど開腹せずにできる手術を受けたと言っていたので、
動脈塞栓術か集束超音波治療を受けたのかもしれない。
子どもの頃に肺炎。
治療
腎虚証として奇経・陰きょう脈の照海、三陰交、関元などに置鍼。
背部は反応の出ている兪穴に置鍼。至室の温灸。
左足の裏に大きなタコがあり、透熱灸で多壮灸。
考察
職業は看護師であるが、現在は子育てと不妊治療のために休職中である。
週に1回の治療で4回目には基礎体温が36℃前後から36.5~9℃まで上昇した。
高温期でも36.6℃より上がったことはなかったらしく、これには患者が驚いていた。
通院中に2回タイミングを図り、2回目で無事妊娠している。
子宮内膜症などの器質的な疾患を持っている人は
妊娠出来る身体になるまでに時間がかかる傾向がある。
この方の場合は2人目ということが早期の妊娠に繋がったと考察する。
尚、鍼灸治療を続けると基礎体温が上がる人は多い。
お腹に宿る赤ちゃんはあたたかくて居心地の良い子宮ベットが好きである。
基礎体温を上げ、あたたかい子宮を作ることが妊娠に繋がる。